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爆音を轟かせて、全てのマシンが通り過ぎていった。
ホームストレートの向こう、第1コーナー目指してバイクの集団が消えて行ったあと、各チームのピットクルーが自分たちのサインボードのところに駆け寄る。
管理人もカメラを片手に、かなり離れた場所でフェンスの隙間をキープする。
腕時計で時間を確認しながら、戻ってくるのを待つ
・・・っと?
後ろを振り返ると、ピットビルディングに大きなモニタが設置されていて、レースの模様が中継されているではないか!
なるほど。
ここはメインスタンドの正面だから、観客がレースの状況を見れるようになっているのだ。
「今、コカ・コーラ・コーナーを通過し・・・」「パナソニック・コーナーを立ち上がったっ!」などと実況中継も行われている。
このあたりは、さすがに筑波とは設備投資のレベルが違うと言わざるを得ない。
バイクレースにかける意気込みは足元にも及んでいないけどね。(FISCOに厳しい管理人)
などと、呑気に考えていられる場合ではなかった。
なぜなら、モニターに映し出される映像では・・・
若ちゃんがトップ!
「ゼッケン74番。若松選手がトップを守って・・・コーナーを通過した!」
というような実況を聞いていて、興奮しないはずがない。
だらしなく口をあけたままモニターに見入っている。
写真を撮ることさえ忘れかけていた。
いけね、もう最終コーナーだ。





慌ててカメラを構え、メインストレートの遠くを見やる。
陽炎の向こうに、左側からはじき出されるように飛び出してきたのは、赤いマシンだ。
ゼッケンはもちろん見えないが、間違いない。若ちゃんだ。
若ちゃんが、オープニングラップを制して、2周目に入った。


(写真:Yukiopapa-san)






富士のストレートは長いので、400mmの望遠でも小さくしか見えないが、見えたと思ったところからは圧倒的に速い。
まるで追いつけていけない。
覗き込んでいる場所も狭いため、レンズを振り回せず、後姿も追えない。
通り過ぎた後、直ちにカメラ背面の液晶モニタで画像を確認するが、恐ろしくピンボケだ。
最近はバイクレースの速さにも慣れてきて、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってきているつもりでも、メインストレートでの疾走を間近で見ると迫力が違う。
このまま失敗写真の山を築き上げるわけにもいかないが、ダメなときはダメなものだ。
2周目に戻ってきたときも、ピントがあわせられない。
ええい、こういうときは場所を変えるしかない。
一気にダンロップ・コーナー(S字)まで向かおう。

そのころ、スタート直後に移動した幸男パパさんがヘアピンコーナーに到着した。
2周目のバトルには間に合った。
今日のこのレースで、もっとも熱い戦場となったコーナーだ。


(写真:Yukiopapa-san)


63番を抑え、トップでヘアピンを通過

(写真:Yukiopapa-san)


レースの序盤は63番の選手との争いだった。
ほとんど差がないままヘアピンコーナーをクリアしていく。
しかし、依然としてトップは維持したままだ。
決勝レースは12周で行われるので、まだ予断は許さない。
しかし、このまま1位でチェッカーを受けるのではないか、という期待が大きく膨らんでくる。


(写真:Yukiopapa-san)


(写真:Yukiopapa-san)

(写真:Yukiopapa-san)

ゼッケン63番の選手との接戦が続いている間に、ゼッケン13番の井上選手がすぐそこまで追い上げていた。
スタートは出遅れたようだったが、さすがにポールポジションを取っただけある。
3台での混戦の予感である。


(写真:Yukiopapa-san)

(写真:Yukiopapa-san)







ところが、なんと。
4周目で、63番、13番にパスされて、若ちゃんは3位に後退してしまった。
各選手の実力が拮抗する中でのハイレベルな戦いだ。
ちょっとしたミスや、一瞬のスキがあれば、それを見逃すほど甘くはない世界なのだ。
しかし、逆もありうるわけだ。
まだまだ序盤。いくらでも抜き返すチャンスはある。
特に、今回は調子も良さそうだし。
次に戻ってくるときは、きっと。


(写真:Yukiopapa-san)

来たっ!
5周目に戻ってきたときには、再び、トップに躍り出ていた。
しかし2位につけている井上選手とは僅差。
ヘアピンコーナーへの突っ込みも、ごくわずかの差で押さえ込んだという状況。
これを現場で見ていたら、本当に息が詰まる思いだ。
若ちゃんと井上選手。
お互いに譲らぬまま、ヘアピンコーナーをパスしていく。
そして、そのままの順位でダンロップコーナーへと向かっていった。


(写真:Yukiopapa-san)


この頃、ようやく管理人が撮影地点に到着。
移動の最中も実況放送が聞こえており、抜かれたことや、抜き返したことも聞いていた。
じれったい思いをしながら、現場に着いて、直ちにカメラを構える。
74番、13番、63番と、もつれ合って現れた。
まさに接戦だ。片時も目を離せない。




S字コーナーを駆け抜けていき、視界から消えてしまうと、そのあとの展開は放送で聞くほかない。
「最終コーナーを立ち上がって・・・」「メインストレートは・・・」「第1コーナーの飛び込みで・・・」
肝心な所が良く聞こえない。
どうなんだ。1位をキープしているのか。


(写真:Yukiopapa-san)


これまで、序盤では接戦になることがあっても、中盤からから終盤にかけては、順位がほぼ固まっていることが多かった。
それが、今回はどうだ。
まったく先が読めない。
しかも、トップ争いの中でのバトルなのだ。
見ているほうが緊張して固まってしまう。
また、ヘアピンコーナーで井上選手が前に出た。
う〜む。やられたか。
そのままの順位で管理人のいる場所に現れた。


(写真:Yukiopapa-san)


抜かれはしたが、しかし、差をつけられているわけではない。
このままついて行けば、また抜き返すチャンスがあるはずだ。
うぅ〜、息苦しい。落ち着かない。
すり鉢状のコースを駆け上がって行く74番のマシン。
次に戻ってくるときはトップに立っているだろうか・・・





放送で流されるレースの模様を聞いていると、もう、かえってジレッタイ。
「メインストレートから第1コーナー。若松選手が〜」

「・・・」

どうなんだよ!

「トップに立った」
おおお!抜き返したか。トップを守っているうちに早く終わってしまわないかな。
しかし、またヘアピンで抜き返されたらしい。


(写真:Yukiopapa-san)



(写真:Yukiopapa-san)

(写真:Yukiopapa-san)

本当にすごい展開だ。レースも中盤から終盤に差し掛かろうというのに、勝負の行方はまるで分からない。
僕らにできることは、ただひたすら、応援することだけだった。




To be continued

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