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設問1

四隅のケラレ

通常、レンズを正面から見ると円形をしている。その先端につけるフィルターやフードも円形である。
一方、フィルムや撮像素子は長方形である。

フィルターの枠が厚い場合や、適切ではない(長すぎる)フードをつけた場合には、フィルムや撮像素子の長辺の方の端において、光が遮られることになる。
簡単に言うと、フィルターやフードが写り込んでいるということ。
しかし、フィルターやフードは、レンズに非常に近いところにあるため、くっきりした境界線の黒にはならず、回り込んで入ってきた光でにじんで暗くなる。



左の写真は、35mmフィルムのカメラで、24mmの焦点域を使って撮影しています。
四隅が暗くなっているのが分かるでしょう(と言っても、下の二つは見えにくいけど)。

これは、通常の厚さのC-PLフィルターをつけたまま撮影したためです。

そもそも逆光なので、PLの効果がほとんどないのだから外せばいいのだけど、「急がないと消えちゃう!」などと思うと慌てるのだよね。

薄枠タイプのフィルターを使えば、このようなケラレはかなり回避できます。


Canon EOS-3 EF24-85mm F8 Auto C-PL


フラッシュ撮影時におけるケラレ


特に、カメラの内蔵フラッシュでは、光を発する部分の高さが低いため、大きいレンズをつけていたり、大きなフードをつけていた場合には、その影が被写体にかかってしまうことがあります。

これが、フラッシュ撮影時におけるケラレと呼ばれるものです。

対策としては、
・ 外付けのフラッシュを使う
  (カメラよりかなり高いところから光を発する)
・ 内蔵フラッシュを使うときには、フードを外す。

などですが、フラッシュは文字通り一瞬の光であり、結果がどうなるか分からないので、経験に頼る部分が大きいですかね。


左の写真は、キヤノンEOS55にSIGMA28-70 F2.8 EXのレンズをつけ、内蔵フラッシュをつけて撮影したものです。

EOS55の内蔵フラッシュは、ボディからの高さがあまりなく、また、このレンズに大きな花形フードをつけていたので、見事なまでにケラレました。

少なくとも、フードは外すべきでしたね。また、室内撮影が多いなら、外付けのフラッシュがやはり便利ですね。

ちなみに、これはホテルの一室なのですが、一応、仕事で来ていたので三脚までは持ってこれず、食器棚みたいなところにカメラを乗せてセルフタイマーで撮りました。
4年ぐらい前の写真ですが、こんな失敗写真が役に立つ日が来るとは思わなかったなあ。

Canon EOS55 SIGMA28-70mm F2.8EX Program Auto




口径食

これは、特にレンズの端のほうから入射する光の一部が、レンズボディで遮られてしまうことにより発生するものです。

レンズの設計において、十分に余裕をもって作られている(イメージサークルを大きくとる)場合には、発生しにくいはずです。
しかし、軽薄短小が好まれる昨今では、小さな鏡筒にピッチリと詰め込んでしまうため、昔のレンズよりも出やすくなった気がします。
普通の撮影ではあまり気になりませんが、丸ボケを出すと周辺部で10日目ぐらいのお月様がいっぱいになってしまうこともあります。


左の写真は、EF70-200mm F4L のレンズを使って、F5.6の絞りで撮影したものです。
後ろの丸ボケがうるさすぎてボツになった写真であります。(トップページに使っている写真(2004年10月現在)は、同じ花を違う角度から撮ったものです。)

綺麗な正円の丸ボケになった方が綺麗なので、口径食の有無もレンズ選びの際には注意したいところです。

ただし、カタログスペックでは分からないので、カメラ雑誌の使用レポートで研究するしかないでしょう。

もちろん、こんな極端なボケを使うことはないですけどね。

Canon EOS-3 EF70-200mm F4L  F5.6 Auto



Y田M子さんによる蹴り


ダメダメ。酒を与えちゃ。

酔ったら収拾がつかなくなるんだから。 あ、いてっ! またケラレた。 


設問2

前ピン

AFやMFでピントを合わせて、被写体よりも手前にピントが合ってしまう状態を「前ピン」、後ろに合ってしまうことを「後ピン」と言います。
「前ピン」「後ピン」は写真雑誌などだけで通用する、一部マニアの言葉だと思ってました。
ところが!
なんと、三省堂の大辞林に載っているんですねえ。

  まえピン まへ− 【前−】

    〔ピンはピントの略〕写真で、焦点が被写体より手前にずれて像がぼけること。


    ⇔後ピン


三省堂提供「大辞林 第二版」より


一方、狙ったところにピントが合うことを、「ジャスピン」と言いますが、これは辞書には載っていないようです。

「小ピピン」は、フランク王国の宮宰カール=マルテルの子で、王位を奪って西暦751年にカロリング朝を開いたことで有名ですね。
カール大帝のお父さんでもあるピピンは、背が小さかったので、「小ピピン」と呼ばれます(たしか、そうだった)。

「ショウピピン」と読むのか「コピピン」と読むのか、高校生のときに悩んだことはありませんか?
なお、水前寺清子が「チーター」と言うのも、本名が「たみこ」=「たーちゃん」で、「ちいさい、たーちゃん」で「ちいたー」だったと思います。あまり関係ありませんが。

「菊正ピン」は、以前、高島礼子がCMに出ていたとき、「私が昔レースクイーンで、あなたがカメラ小僧だった・・・」みたいなセリフがありました。少しだけカメラに関係するとすれば、こんなものかな?


設問3


AEB

今は、カメラ任せのオートでも、十分に綺麗に撮れるようになっています。しかも、ネガフィルムはラチチュードも広いし、焼付けのときの補正でカバーできてしまうので、多少露出を外しても問題ない。
しかし、リバーサルでは、撮影のときに露出を外すと、リカバリーできないことが多いので、段階露出で念を押しておく方が安全です。

最近のカメラでは、あらかじめカメラに設定しておき、いちいち補正ダイアルを回さなくてもできてしまう機能がついています。

これをAuto Exposure Bracket = AEB 機能と呼んでいます。

まあ、その都度補正すればよいので、わざわざカスタムファンクションでは設定していません、僕は。
だったら、設問にするな、と言うところですが、知識としては持っておきたいので。

ちなみに、ABSは皆さんおなじみの「アクリロニトリル ブタジエン スチレン」ですね。「Anti-lock Braking System」かと思った?
でも、車のあちこちに「ABS樹脂」は使われているはずです。覚えておきましょう。ABSは、あくりろにとりる・・・
EIBは欧州投資銀行、CCBは「ロマンチックがとまらない」のあのグループですね。古っ。


設問4


歪曲収差

レンズを通して映る画像は、フィルムや撮像素子に相似形であることが理想です。しかし、画面周辺にいくと像が縮んだり伸びたりして、相似性が崩れることがあります。
これが歪曲収差(ディストーションです。

四隅が縮む場合を「樽型のディストーション」、四隅が伸びている場合を「糸巻き型のディストーション」と呼びます。
いずれも、正方形を写したときに出来上がる形状を、見たままに名づけた呼び名です。
ただし、「糸巻き型」は、「ピンクッション型」とも呼ばれます。クッションの真ん中にピンを刺せば、この形になるので。



【たる型ディストーション】







【糸巻き型ディストーション】






ズームレンズの広角側では、たる型の歪曲収差が起こりやすくなります。
最近はズームレンズが圧倒的に多く、記念写真は普通その広角側で撮られることが多い。
ということは、端に立つと、「ビア樽型」に膨らんで写る可能性があると言うこと。

写真を見て「ちょっと太った?」などと聞かれたら、

このレンズ、たる型のディストーションが目立つわね

と切り替えす手があるのだ。通用するかどうかはともかく・・・


設問5、設問6、設問7


球面収差

「球面レンズは、平行光線を完全に一点に収束させることができない」という、理論上の弱点があります。

レンズの中心に近いところを通る光が本来の焦点に集まるとしても、レンズの周辺を通る光は、レンズに近いところにフォーカスしてしまう特徴があります。
この収差を球面収差と言います。


【球面収差】






この球面収差を解消するためには、2つの方法があります。
@ 凹レンズと組み合わせる。
A 非球面レンズを使う。

凸レンズと凹レンズは、球面収差の発生の方向が違うので、適切に組み合わせるとかなり解消することができます。
一方、レンズの中心から外側になるほどカーブが緩やかになるような非球面レンズであれば、球面収差を解消することができます。
これは、理論上、完璧に球面収差を補正することができますが、精度の高い加工が必要となるため、以前は製造できるメーカーが限られており、かつ、高額になる欠点がありました。
現在は、非球面レンズの製造には様々な方法が開発されており、比較的容易に手に入れることができるようになっています。


設問8、設問9

口径食

球面収差が補正されて、光軸上の光は1点に集まるようになったとしても、光軸から外れた光(斜めに入った光)が1点に収束せず、彗星が尾を引くように画像が伸びることがあります。
このような収差を、その滲みの形状が彗星(Comet)に似ていることから、コマ収差と言います。
コメット、コメット、コメッ、・・・コマッ、コマ、コマ!となって、コマ収差となったようです。
英語でも、cometではなく、coma(またはcomatic) aberrationといいます。



コマ収差によるボケの大きさは、有効径の2乗、画角の1乗に比例します。
したがって、大口径のレンズ(F値の小さいもの)ほど発生しやすく、広角レンズほど発生しやすいことになります。

よく雑誌のレンズ使用レポートで、
開放では周辺域で流れる
などの表現がありますが、主にこのコマ収差の発生度合いのことと考えていいです。

レンズ周辺域の屈折誤差によって生じるものなので、絞りこむことでかなり改善されます。



設問10、設問11

色収差 (軸上色収差)

白色光(太陽光)をレンズに通すと、虹色のスペクトルが見られます。
これは、光の波長によって屈折率や分散率が異なるために起きる現象です。赤は長波長で弱く屈折し、青(紫)は短波長で強く屈折する特徴があります。
凸レンズ1枚では、この光の特性がそのまま出ますが、凹レンズと組み合わせることによって、それぞれの特性をある程度打ち消すことができます。



【単凸レンズの色収差】







【凸レンズと凹レンズの組み合わせであるアクロマート】






安い天体望遠鏡(というと語弊があるかもしれないが、ホームセンターなど、およそ光学機器を取り扱うのにふさわしくない店に売っているような望遠鏡)は、ほぼ全てアクロマートタイプの対物レンズです。
もちろん、ちゃんとしたメーカーのものであれば、十分に実用範囲ではありますがこれだけでは消しきれない色収差が残っています。これを「残存色収差」とか「2次スペクトル」と言います。

そのため、残存色収差をさらになくすために、カメラメーカーや望遠鏡メーカーは工夫をしているのです。
例えば、凸凹凸の3枚構成のレンズや、通常の光学ガラスよりも屈折率の小さいガラスや、分散特性が特殊なガラスを使って徹底的な色消しを行っています。

キヤノンの蛍石(厳密にはガラスではない?)やUDレンズ、ニコンのEDレンズは、低分散特性のレンズであり、通常の光学ガラスのレンズと組み合わせることによって、効果的な色消しを図っています。

その昔、天文少年だった人たちには、「タカハシのフローライト」といえば、1gぐらいよだれが出るほどの垂涎の的だったわけであります。ま、知らないでしょうが・・・・


設問12

諸収差の改善

設問5,6,7,8,9で説明したように、球面収差による滲みは口径の3乗に、コマ収差の尾の長さは口径の2乗に比例して大きくなります。
つまり、絞りを絞って、有効径を小さくしてやると急速にこれらの収差が改善することになるのです。
サイデルの5収差のうち歪曲収差を除いて、絞り込むことによって、何らかの改善は期待できます。(効果の差はあるが)

歪曲収差は、周辺部に入る光の角度の話なので、口径の大きさではなく、レンズと絞りの位置関係によってきます。
断面図が対称な形のレンズ設計(ガウスタイプ←試験に出るからね)で、その中心部に絞りを置くと歪曲収差がでにくい性質があります。
設問10,11の解説(上の図)は軸上色収差の概念説明ですが、これは絞ることによって少し減少します。一方、倍率色収差は絞りによって改善されません。

設問13

口径食

設問1の解説のうち、「口径食」をご参考ください。
ビネッティングとも言いますが、あんまり言いません。

日食、月食は、今の科学技術をもってすれば、「何月何日の何時に日食が起こる」ということは完璧に予測できます。
一方、Macocoさんの肉食は、突然発生するので予測は不可能です。まあ、予測するまでもなく、しょっちゅう食べているようではありますが・・・

つづく・・・

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