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設問1、設問2、設問3

シャッタースピードと絞りの関係

ちょっと算数の話です。

レンズの明るさを表す数値として、「口径比」というものがあります。
対物レンズの有効口径(D)を焦点距離(f)で割った値のことです。

カメラ・レンズのパンフレットや、写真雑誌を見ていると、「F値」または「F」という文字をよく眼にしますが、F値は「口径比の逆数」です。

F=f/D

絞りを絞るということは、口径が小さくなること。
つまり、分母であるDが小さくなるため、F値は大きくなります。

逆に言うと、F値が大きいと言うことは、口径(D)が小さいことであり、光が通る面積が小さくなるため、暗いことになります。



円の面積(S)は、半径(r)のときに  ですね。
面積を半分にするには、半径を
1/√2する必要があります。
したがって、口径(D)も1/√2になるので、F値は√2倍になります。

青色の円の面積は、グレーの円の
1/2の面積となっている。




ここまでいいですか?

そういうわけで、光が通る面積が半分になることは、F値が√2倍になることです。これを「1段絞る」と言います。

√2≒1.41421356・・・なので、1段ずつ変化するときのF値は公比約1.4倍の等比数列になります。

1段絞ると面積が半分になるので、同じ光量を確保するには露光時間を2倍にする必要があります。
したがって、F5.6のときに1/1000のシャッタースピードのときは、以下のような関係になります。

F値 2 2.8 4 5.6 8 11 16 22
Spd 8000 4000 2000 1000 500 250 125 60


フィルムの感度はISOで表されます。(昔はASAだったのだけど、いつから変わったんだろう?)
通常市販されているものは、50、100、200、400、800、1600と、2倍の等比数列です。
文字通り、それぞれ2倍の感度になっていきます。
したがって、同じF値のときは、ISO感度が2倍になれば、半分の露光時間で同じ露出が得られます。

ISO 50 100 200 400 800 1600
Spd 30 60 125 250 500 1000


設問4 〜 設問8

画角

画角」とは、鮮明に写せる範囲(イメージサークル)を角度で表したものです。
正確には、公称対角線画角とは、無限円に焦点を合わせた場合の、レンズの第二主点と画面の対角線(43.2mm)の両端を結んだ角度を言います。
「第二主点」は必ずしもレンズ構成の中心にあるわけではありません。
ここでは説明を省きますが、第二主点から撮像面までの光学距離が焦点距離です。


対角線画角46度前後のレンズを標準レンズと呼んでいます。

35mmフィルムカメラの場合、焦点距離が50mmのレンズが標準レンズとなります。


フィルムの対角の長さは、ピタゴラスの定理により、

となります。

同様に、ニコンD70のCCDの対角線サイズを計算すると、
28.4mmとなります。

43.2mm÷28.4mm=1.52倍


したがって、D70において、約46度の画角になるレンズは、

50mm÷1.52=32.9mm

ということで、約33mmが標準域の焦点距離となります。




設問9 〜 設問11

焦点深度と被写界深度

焦点が合う範囲は、本来は1点だけのはずです。
しかしながら、人間の目で見たときに「点」に見える大きさであれば、点とみなすことを許容する、という範囲があります。
これを、「許容錯乱円」と言います。
人間の目の解像度には限界があるので、本当はボケているとしても、拡大しないと分からないものであれば、ボケていないとみなすのです。

では、どの程度まで拡大することを前提としているのかというと、一般的に、35mmフィルムの一眼レフカメラの場合、

キャビネサイズ(12cm×16.5cm)に引き伸ばして、25〜30cmの距離から鑑賞したときに点が点に見える

とされています。

具体的には、撮像画面対角線の長さの1/1000〜1/1500程度とされています。
キヤノン(EFレンズ)の場合、許容錯乱円の大きさは、直径0.035mm設定されており、この値を基準に被写界深度などが算出されています。


【許容錯乱円と被写界深度の概念】






下の写真は、ある方が所有するスクーターのブレーキシステムです。
左の写真では「NISSIN」の全ての文字がはっきりと見えるような気がします。
しかし、右の拡大写真で分かるように、実は2文字目の「I」の近辺にしかピントが合っていません。


【前輪ディスクブレーキシステム】

【拡大写真】

CANON EOS-3 + EF100mm F2.8 MACRO USM

「被写界深度」の数値的データは、許容錯乱円を0.035mmとして計算されます。(下表参照)

しかしながら、ピンボケしている・していない、の判断は、その写真の拡大度合いによって変わってくるのです。

EF100mm F2.8マクロ 被写界深度データ
[単位:m]
撮影
距離
F2.8 3.5 4 5.6 8 11 16 22
近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点 近点 遠点
98.9975 80.2943 71.5530 50.6231 35.8257 25.3697 17.9621 12.7285
2 1.9665 2.0348 1.9588 2.0430 1.9539 2.0484 1.9355 2.0692 1.9100 2.0994 1.8752 2.1436 1.8282 2.2098 1.7658 2.3110
1.3 1.2871 1.3132 1.2841 1.3163 1.2822 1.3183 1.2750 1.3261 1.2650 1.3372 1.2511 1.3533 1.2319 1.3768 1.2060 1.4116
1 0.9930 1.0071 0.9914 1.0088 0.9904 1.0098 0.9864 1.0140 0.9810 1.0199 0.9733 1.0284 0.9627 1.0407 0.9481 1.0587
0.8 0.7960 0.8041 0.7951 0.8050 0.7945 0.8056 0.7922 0.8080 0.7890 0.8114 0.7845 0.8162 0.7783 0.8231 0.7697 0.8332
0.572 0.5704 0.5736 0.5700 0.5740 0.5698 0.5743 0.5689 0.5752 0.5676 0.5765 0.5658 0.5784 0.5632 0.5811 0.5597 0.5850
0.476 0.4751 0.4769 0.4749 0.4771 0.4747 0.4773 0.4742 0.4778 0.4735 0.4785 0.4725 0.4796 0.4710 0.4811 0.4690 0.4833
0.429 0.4284 0.4296 0.4282 0.4298 0.4281 0.4299 0.4278 0.4302 0.4273 0.4308 0.4266 0.4315 0.4255 0.4325 0.4241 0.4340
0.384 0.3836 0.3844 0.3835 0.3845 0.3834 0.3846 0.3832 0.3848 0.3829 0.3851 0.3824 0.3856 0.3818 0.3863 0.3809 0.3872
0.36 0.3597 0.3603 0.3596 0.3604 0.3596 0.3604 0.3594 0.3606 0.3592 0.3608 0.3588 0.3612 0.3583 0.3617 0.3577 0.3624
0.341 0.3408 0.3412 0.3407 0.3413 0.3407 0.3413 0.3406 0.3414 0.3404 0.3416 0.3401 0.3419 0.3398 0.3423 0.3393 0.3428
0.33 0.3298 0.3302 0.3298 0.3302 0.3297 0.3303 0.3296 0.3304 0.3295 0.3305 0.3293 0.3307 0.3290 0.3310 0.3286 0.3315
0.32 0.3199 0.3202 0.3198 0.3202 0.3198 0.3202 0.3197 0.3203 0.3196 0.3204 0.3194 0.3206 0.3192 0.3208 0.3188 0.3212
0.315 0.3149 0.3151 0.3148 0.3152 0.3148 0.3152 0.3147 0.3153 0.3146 0.3154 0.3145 0.3155 0.3143 0.3157 0.3140 0.3160
0.307

0.3069

0.3071 0.3069 0.3071 0.3069 0.3071 0.3068 0.3072 0.3067 0.3073 0.3066 0.3074 0.3064 0.3076 0.3062 0.3078
キヤノンカメラミュージアムより転載


一方、焦点を合わせた面の前後で鮮明に撮影できる範囲を、焦点深度と言います。


【F2の焦点深度】

 





【F8の焦点深度】

 



絞りを絞った方が焦点深度が深くなるので、ピントの合う範囲が広くなります。

したがって、風景写真で手前から奥までピントを合わせたい場合(「パンフォーカス」と言います)、絞りを絞った方がよいのです。こういう動作を、通常、絞り込むと言います。

逆に、主題にだけピントが合って、他はボケている雰囲気を出したい場合、絞りを開ければ良いのですが、もともとF値の暗いレンズ(開放でもF5.6とか、F値の大きいレンズ。ズームレンズでありがち。)だと、綺麗にボケてくれないことがあるので開放F値が明るい方がいいのですね。



設問12

色収差

「色収差」は、白色光(太陽光)をレンズに通したときに見られる、虹色のスペクトルが生じる現象のことです。
光の波長によって屈折率や分散率が異なるために起こるこの現象は、ぁ、と感動に浸るには良いものの、写真においては、要するに1点に光が集まっていないということなので、シャープネスを欠いた画像を作ってしまうのであります。



詳しく言うと、色収差にも2種類あり、「軸上色収差」と「倍率色収差」に分けられますが、ここではおいておきます。

さて、この色収差を補正するためには、






つづく・・・

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